潮汐基準地点とは——あなたの釣り場の潮位はどこの値なのか

全国3,729か所の釣り場の潮位は、24の基準地点から計算しています。その仕組みと、基準地点から離れた釣り場で生じる誤差の読み方を正直に解説します。

2026.08.09

潮どきの各釣り場のページには「潮汐基準地点」という項目があります。 たとえば北海道函館市の漁港を開くと「深浦」と表示される。 函館なのに青森県の地点名が出てくるので、戸惑う方もいるかもしれません。

これは間違いではなく、潮位計算の仕組みによるものです。 ただし、その仕組みには限界もあります。 この記事では、潮どきが何をどう計算しているのかと、どこに誤差が出るのかを正直に説明します。

なぜ釣り場ごとに観測所があるわけではないのか

潮位を計算するには、その地点の調和定数(各分潮の振幅と遅角)が必要です。 そして調和定数を求めるには、実際に潮位を長期間観測しなければなりません。 1年以上のデータがないと、周期の近い分潮を分離できないためです。

当然ながら、全国3,729か所の漁港・砂浜すべてに検潮所があるわけではありません。 国が長期観測を続けている検潮所は限られており、公表されている調和定数もその地点のものだけです。

潮どきは、そのうち全国24地点の調和定数を収録しています。 各釣り場には最も近い基準地点を割り当て、その調和定数で潮位を計算しています。

潮どきが収録している24の基準地点

緯度の高い順に、稚内・石狩(小樽)・深浦・佐渡・仙台(塩釜)・能登・富山・東京・境(境港)・舞鶴・横浜・名古屋・浜田・神戸・大阪・御前崎・広島・福岡・高知・串本・室戸岬・土佐清水・油津・那覇の24地点です。

内訳は日本海側が9地点(稚内・石狩・深浦・佐渡・能登・富山・境・舞鶴・浜田)、太平洋側と瀬戸内海が15地点です。 日本海側は潮位差そのものが小さいため、地点数のわりに実用上の影響は太平洋側ほど大きくありません。

稚内は厳密には宗谷海峡に面する地点ですが、潮汐の性質が日本海側に近いため、潮どきの記事ではまとめて日本海側として集計しています。

実際、どれくらい離れているのか

3,729か所すべてについて最寄りの基準地点までの距離を計算すると、平均92km、中央値78kmでした。 全体の67.1%は100km以内に基準地点があります。 一方で、200kmを超える釣り場も6.7%あります。

最も遠いのは小笠原諸島です。 母島は最寄りの御前崎まで963km、父島(二見)も919km離れています。 次いで八重山諸島で、与那国島の久部良から那覇まで514km、西表島でも440km前後。 これらの地域では、潮位の絶対値はもちろん、満干潮の時刻も参考程度に見てください。

基準地点から離れるとどうずれるか

基準地点と釣り場が離れると、主に2つのずれが生じます。

1つは時刻のずれです。 潮汐は波として海を伝わるため、地点が変われば満潮の時刻も変わります。 潮どきは経度差による補正(地方時の補正)を行っていますが、湾の奥と湾口のように地形で潮が遅れる効果までは再現できません。 入り組んだ湾の奥では、実際の満潮が計算より30分〜1時間遅れることがあります。

もう1つは潮位差の大きさのずれです。 湾の奥では潮が押し込まれて干満差が大きくなり、開けた外洋に面した場所では小さくなる傾向があります。 基準地点と地形条件が違えば、干満差の絶対値もずれます。

「満潮・干潮の時刻」と「潮が動く方向(上げか下げか)」は、多少ずれても釣りの判断には使えます。一方で「潮位が何センチか」の絶対値は、基準地点から遠い釣り場ほど参考値として扱ってください。

割り当ての精度が落ちやすい場所

距離以上に問題なのは、海峡や半島で海域が分かれている場所です。 直線距離では近くても、潮汐の性質がまったく違うことがあります。

冒頭の函館の例がそれです。 函館は津軽海峡に面していますが、潮どきの24地点には津軽海峡の地点がありません。 実データを見ると、函館市内の28か所のうち18か所が深浦(青森県・日本海側)、10か所が石狩(小樽)に割り当てられています。 どちらも日本海側の地点であり、津軽海峡の潮汐を正しく表しているとは言えません。

より深刻なのは北海道の太平洋側です。 潮どきが北海道に持つ基準地点は稚内と石狩(小樽)の2つだけで、どちらも日本海側・宗谷海峡側にあります。 その結果、室蘭・苫小牧・浦河・広尾・釧路・根室といった太平洋側の釣り場は、すべて日本海側の石狩(小樽)に割り当てられています。 距離も釧路で239〜302km、根室では355〜388kmに達します。 潮位差が10倍近く違う海域の値を当てているため、ここは潮どきの最も大きな弱点です。

オホーツク海側(網走・紋別)も同様で、稚内が割り当てられますが海域の性質は異なります。 一方、留萌・増毛など北海道の日本海側中部は、同じ日本海側の石狩(小樽)が最寄り(67〜121km)なので、比較的素直に使えます。

北海道太平洋側・オホーツク海側・南西諸島・小笠原の釣り場では、表示される潮位を絶対値として信用しないでください。この点は潮どきの現状の限界として明記しておきます。基準地点の追加は今後の課題です。

実用上の付き合い方

基準地点が遠い釣り場では、次のように使うのが現実的です。 まず潮どきで「潮が動く時間帯」の目安を掴み、実際に釣行したときの体感(何時ごろ流れが速かったか)と照らし合わせます。 数回通えば、その釣り場での「潮どきの表示と実際のずれ」が掴めてきます。 あとはその補正を頭に入れて使えば、十分に実用的です。

各釣り場のページには使用している基準地点名を明記しています。 同じ基準地点を使う釣り場どうしは、時刻も潮位も同じ計算結果になります。 近くの釣り場と見比べると、どの範囲が同じ基準で計算されているかが分かります。

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