日本海側の釣りと潮——潮位差40cmの海で「潮どき」をどう読むか

日本海の潮位差は太平洋側の約5分の1。M2分潮が5cm前後しかない海で、大潮・小潮より重要になる指標と、日潮不等の読み方を実データから解説します。

2026.08.09

太平洋側で釣りを覚えた人が日本海側に移ると、まず戸惑うのが潮の感覚です。 「大潮を狙って行ったのに、潮見表を見ても潮位がほとんど動いていない」。 これは勘違いではなく、実際にそうなのです。

潮どきが収録する日本海側9地点の年間最大干満差は、平均でわずか40cm。 太平洋・瀬戸内側15地点の平均213cmに対して約5分の1です。 太平洋側の「小潮」(東京で平均96cm)よりも小さい潮位差が、日本海側の「大潮」の実力ということになります。

なぜ日本海は潮が動かないのか

日本海は、対馬海峡・津軽海峡・宗谷海峡・間宮海峡という4つの狭い海峡でしか外洋とつながっていない、半閉鎖的な海です。 しかもこれらの海峡は幅が狭く水深も浅い。

潮汐は外洋で発生した波が沿岸に伝わってくる現象なので、外洋との接続が細ければ、その波は日本海の中まで十分に入ってこられません。 結果として、日本海内部の潮位変動は小さく抑えられます。

数値で見ると明快です。 月による主要分潮 M2 の振幅は、広島で101.5cm、東京で47.8cmあるのに対し、佐渡5.5cm、能登5.6cm、富山5.7cm、深浦4.9cm、稚内に至っては2.2cmしかありません。

日本海側の分潮バランス——日周成分の比率が高い

日本海側の特徴は、単に潮位差が小さいことだけではありません。 分潮のバランスも太平洋側と違います。

東京では M2(47.8cm)が K1(25.1cm)の約2倍ありますが、佐渡では M2(5.5cm)と K1(5.4cm)がほぼ同じ。 稚内に至っては K1(6.4cm)が M2(2.2cm)の約3倍で、日周成分が主役になっています。

半日周成分に対する日周成分の比を表す形数 F で見ると、太平洋側の東京が0.63、横浜0.67なのに対し、佐渡1.46、深浦1.52、石狩1.53、稚内3.08。 稚内は日本で数少ない「日周潮」に分類される地点です。

日周成分が強い地点では、1日2回の満潮の高さに大きな差が出ます(日潮不等)。「今日は満潮が2回あるが、狙うべきは午前か午後か」の判断が、太平洋側より重要になります。

潮位差より「潮位の変化速度」を見る

潮位差が小さい海域で「大潮だから釣れる」という判断はあまり機能しません。 代わりに注目すべきは、潮位が動く速度です。

潮位差が40cmでも、それが2時間で動けば1時間あたり20cm。 潮位差が180cmあっても、6時間かけて動けば1時間あたり30cm。 この2つの差は、体感としてはそれほど大きくありません。 重要なのは総量ではなく「今、動いているか」です。

潮どきの潮汐グラフでは、カーブの傾きが急な時間帯が潮のよく動く時間帯です。 日本海側の釣り場では、グラフの縦幅(潮位差)ではなく傾きに注目してください。 当月の潮見表の「干満差」列で、その月の中で相対的に大きい日を選ぶのも有効です。

日本海側で潮より効く要素

潮の影響が相対的に小さいぶん、日本海側では他の要素が釣果を左右します。

  • 風とうねり——日本海は冬季に季節風が強く、波が高くなります。釣行可否の判断で潮より優先度が高い要素です
  • 水温——対馬暖流の影響で、同じ緯度の太平洋側より水温が高めに推移する海域があります。魚種の北限が押し上げられています
  • マズメ——潮の動きが弱いぶん、光量変化による活性の変化が相対的に大きく効きます
  • 地形と地形変化——潮流が弱いので、堤防の先端や潮通しの良い場所といった「地形が作る流れ」の重要度が上がります

日本海側の潮汐基準地点

潮どきが日本海側に持つ基準地点は、稚内・石狩(小樽)・深浦・佐渡・能登・富山・境(境港)・舞鶴・浜田の9地点です。 日本海沿岸の釣り場は、このいずれかが割り当てられます。

浜田(島根県)だけは年間最大59cmと、日本海側の中では大きめの値になります。 M2 分潮の振幅も7.9cmと、他の日本海側地点(稚内2.2cm、そのほかは4.7〜6.2cm)より一回り大きい。 日本海側といっても一様ではありません。

注意が必要なのは、日本海側の基準地点が北海道の太平洋側・オホーツク海側の釣り場にも割り当てられてしまう点です。 室蘭・苫小牧・釧路・根室などは石狩(小樽)が最寄りになりますが、潮汐の性質がまったく違う海域です。 これらの地域では潮位の絶対値を信用せず、時刻の目安として使ってください。

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