潮どきは全国2,930の漁港のデータを収録しています。 しかし、そのすべてが自由に釣りをしてよい場所ではありません。
近年、釣り禁止・立入禁止になる漁港が増えています。 その理由の大半は、釣り人側の問題行動です。 この記事では、漁港がどういう施設なのかという前提から、具体的に何をしてはいけないのかを整理します。
漁港は「漁業のための施設」である
前提として押さえておくべきことがあります。 漁港は「漁港及び漁場の整備等に関する法律」(2024年4月の改正で漁港漁場整備法から改称)にもとづいて整備された、水産業のための公共施設です。 防波堤も岸壁も物揚場も、漁船の安全な係留と水揚げのために作られています。
つまり釣り人は、本来の用途とは違う目的で施設を使わせてもらっている立場です。 「税金で作られた公共施設だから自由に使える」という理屈は通りません。 港湾管理者や漁業協同組合が利用を制限する権限を持っています。
実際、多くの漁港では防波堤の先端部や係留施設が立入禁止に指定されています。 看板やロープがある場所には入らない。 これが最初のルールです。
立入禁止が広がった直接の原因
漁港が釣り禁止になっていく典型的な流れは、次のようなものです。
- ▪ゴミの放置——仕掛けの袋、餌の空きパック、飲料容器。特に切れた釣り糸と針は、漁業者の手や漁網、港内の生物に被害を与えます
- ▪駐車問題——漁業関係車両の動線を塞ぐ、水揚げ作業スペースへの駐車。作業に実害が出ます
- ▪係留ロープへの被害——ロープの上を歩く、ロープに仕掛けを絡ませる。切れれば船が流されます
- ▪危険行為による事故——立入禁止区域での転落事故が起きると、管理者責任が問われるため一律禁止に踏み切らざるを得なくなります
- ▪深夜の騒音——港の近くには漁業者の住宅があります。早朝から仕事の方が住んでいます
- ▪排泄物——トイレのない漁港で用を足す。これが理由で禁止になった漁港が実際にあります
守るべき具体的なルール
- ▪立入禁止の表示がある場所には入らない——看板・ロープ・チェーンはすべて意思表示です
- ▪ゴミは必ず持ち帰る——自分のものでなくても、目についた釣り糸は拾って帰る
- ▪駐車は指定場所に——不明なら港から離れた場所に停めて歩く。漁協や近隣に迷惑をかけない位置に
- ▪係留ロープ・船に仕掛けを近づけない——引っかけたら必ず回収する
- ▪漁業作業の邪魔をしない——水揚げ・出港の時間帯は場所を空ける。声をかけられたら素直に従う
- ▪深夜早朝は静かに——ドアの開閉音、話し声、ヘッドライトの向き
- ▪撒き餌の後始末——岸壁に残った撒き餌は海水で流す
- ▪トイレは事前に済ませる——コンビニ等を利用してから向かう
釣りが認められている漁港でも変わりうる
現在釣りができる漁港でも、状況は変わります。 工事、事故、漁業権の設定、季節的な規制など、理由はさまざまです。
潮どきに収録している漁港データは、国土数値情報(国土交通省)の漁港データをもとにしています。 これは漁港の所在を示すデータであり、釣りの可否を示すものではありません。 現地の看板と掲示が常に優先します。
初めての漁港に行く場合は、現地で掲示を確認し、周囲の状況を見てから竿を出してください。 誰も釣りをしていない漁港には、していない理由があることがあります。
逆に「開かれる」動きもある——漁港施設等活用事業
立入禁止が広がる一方で、制度としては逆方向の動きも始まっています。 2023年に漁港漁場整備法が改正され(2024年4月施行)、「漁港施設等活用事業」という枠組みが新設されました。
これは、漁業利用に支障のない範囲で、民間事業者が漁港の施設や水域を活用できるようにする制度です。 対象には水産物の販売・飲食のほか、「交流の促進に関する事業」として遊漁や漁業体験活動が明示されています。 従来は最長1年の一時利用許可しか出せませんでしたが、この制度では最長30年の計画が認められ、事業者が長期の投資をできるようになりました。
つまり「釣り人が勝手に入る場所」ではなく「管理者が計画的に開放する場所」として、遊漁を漁港に位置づける道ができたということです。 実際に釣り施設として整備・有料開放される漁港も出てきています。 マナーが守られるほど、この方向の動きは進めやすくなります。
遊漁のルールも確認を
マナーとは別に、法的なルールもあります。 都道府県ごとに漁業調整規則があり、採捕が禁止されている魚種・サイズ・期間・漁具が定められています。
とくに注意が必要なのは、アワビとナマコです。 この2種は2020年12月施行の改正漁業法で「特定水産動植物」に指定され、漁業権のない者が採捕すると3年以下の懲役または3,000万円以下の罰金という重い罰則の対象になります。 この罰金額は日本の法律で個人に科されるものとしては最高額です。 運搬・保管・所持や、売買の媒介・あっせんも同じ罰則の対象です。 レジャーや自家消費のための少量でも適用されます。
サザエやイセエビも、多くの都道府県で漁業調整規則により一般の採捕が禁止されています。 「潜って獲る」以外に、磯で拾う行為が違反になる場合もあります。
各都道府県の水産部局のサイトに遊漁のルールが掲載されています。 釣行前に一度目を通しておくと安心です。