潮どきが収録する全国24地点の調和定数から2026年の日別干満差を計算すると、1位は広島の387cmでした。 2位の名古屋(253cm)を100cm以上引き離しています。
瀬戸内海は日本で最も潮が動く海域です。 潮流が速く、鳴門海峡や来島海峡では最大10ノット前後(時速約18km)に達します。 関門海峡と合わせて「日本三大急潮」と呼ばれる難所です。 この海で釣りをするということは、潮を無視できないということでもあります。
なぜ瀬戸内海はこれほど潮が動くのか
瀬戸内海は、東の紀伊水道と西の豊後水道という2つの入口から潮が流れ込む、細長く浅い内海です。 ここに3つの要因が重なります。
第一に、狭い水路に潮が押し込まれることで水位が持ち上げられます。 第二に、水深が浅いため(平均約38m)、同じ量の水が入っても水位の変化が大きくなります。 第三に、瀬戸内海の固有振動周期が半日周潮の周期(約12時間)に近く、共振に近い増幅が起きます。
結果として、広島の M2 分潮の振幅は101.5cm。 これは東京(47.8cm)の2倍以上、佐渡(5.5cm)の18倍以上という値です。
東西から入る潮がぶつかる——潮流の複雑さ
瀬戸内海の潮流が複雑なのは、東西2つの入口から入った潮が海域の中でぶつかるためです。 ぶつかる場所(潮境)は潮の満ち引きに応じて移動します。
このため、瀬戸内海では「隣の島の裏側では潮の向きが逆」ということが普通に起こります。 同じ時刻でも場所によって上げ潮と下げ潮が同居する。 単純に「今は上げ潮だから」という判断が通用しにくい海域です。
狭い水道(来島海峡、鳴門海峡、明石海峡など)では、断面積が絞られるぶん流速が跳ね上がります。 これらの海域は釣り場としては一級ですが、渡船や船釣りでは潮止まり前後しか実釣できないことも珍しくありません。
潮が速すぎて釣りにならない時間帯がある
一般に「潮が動くほど釣れる」と言われますが、瀬戸内海ではこれが逆転することがあります。 流れが速すぎると、仕掛けが流されて底が取れない、ラインが張られて誘いが入らない、といった問題が起きます。
瀬戸内海の釣りでは「潮止まり前後の、流れが緩む時間帯」が実釣のチャンスになるケースが少なくありません。 大潮の日は流れが速すぎて釣りにならず、中潮・小潮のほうが釣りやすい——そういう判断が成立する海域です。
潮どきの潮汐グラフでは、カーブが最も急な時間帯が最も流れが速い時間帯です。 瀬戸内海の釣り場では、この「最も急な時間帯」を避ける読み方も選択肢に入れてください。
干満差が大きいことのもう一つの意味——地形の露出
干満差が387cmあるということは、干潮時には満潮時より約4m低い位置まで海面が下がるということです。 遠浅の海岸では、水平方向に数百m潮が引くこともあります。
これは釣り場の地形が大きく変わることを意味します。 満潮時には水没している岩礁やカケアガリが、干潮時には露出する。 逆に干潮時に立てる場所が、満潮時には水没して退路を断たれる危険もあります。
瀬戸内海の磯・干潟に入る際は、必ず当日の満潮時刻と潮位を確認してください。 潮どきの当月の潮見表で、満潮の時刻と潮位が一覧で確認できます。
瀬戸内海の潮汐基準地点
潮どきが瀬戸内海周辺に持つ基準地点は、広島・神戸・大阪の3地点です。 広島は瀬戸内海西部、神戸・大阪は大阪湾をカバーしています。
ただし瀬戸内海は多島海で、島の配置によって局所的に潮の挙動が変わります。 8分潮による計算では表現しきれない部分があり、瀬戸内海は潮汐計算が最も難しい海域の一つです。 潮どきの表示も、他海域より誤差が大きめに出る可能性があることを承知の上でお使いください。
実際の潮流の詳細を知りたい場合は、海上保安庁が公表している潮流推算(海域ごとの流向・流速)も併せて確認することをおすすめします。