「大潮だから潮が動く」——釣りの世界で当たり前に語られるこの言葉が、実は地域によってまったく意味の違うものだと知っている人は多くありません。
潮どきが収録している全国24の潮汐基準地点について、2026年1年分の日別干満差を実際に計算しました。 その結果、年間で最も干満差が大きい日の値は、地点によって34cmから387cmまで開きがありました。 約11倍です。
年間最大干満差ランキング(上位10地点)
各地点の調和定数から2026年の365日分を計算し、日ごとの最高潮位と最低潮位の差を求めた結果です。
- ▪1位 広島(広島県): 387cm
- ▪2位 名古屋(愛知県): 253cm
- ▪3位 那覇(沖縄県): 229cm
- ▪4位 油津(宮崎県): 214cm
- ▪5位 土佐清水(高知県): 209cm
- ▪6位 東京(東京都): 208cm
- ▪7位 福岡(福岡県): 207cm
- ▪8位 高知(高知県): 203cm
- ▪9位 室戸岬(高知県): 202cm
- ▪10位 横浜(神奈川県): 197cm
下位10地点——日本海側が並ぶ
- ▪広島の対極 石狩・小樽(北海道): 34cm
- ▪境・境港(鳥取県): 36cm
- ▪深浦(青森県): 37cm
- ▪稚内(北海道): 38cm
- ▪佐渡(新潟県): 39cm
- ▪能登(石川県): 39cm
- ▪富山(富山県): 39cm
- ▪舞鶴(京都府): 41cm
- ▪浜田(島根県): 59cm
- ▪神戸(兵庫県): 167cm
太平洋側と日本海側の平均——約5倍の差
24地点を太平洋・瀬戸内側(15地点)と日本海側(9地点)に分けて、年間最大干満差の平均を出すと次のようになりました。
太平洋・瀬戸内側の平均: 213cm。 日本海側の平均: 40cm。 約5.3倍の差です。
この差は「大潮の日に何をすべきか」を根本的に変えます。 太平洋側では大潮の日は潮が激しく動き、流れが速すぎて釣りにくくなることさえあります。 一方の日本海側では、年間で最も潮が動く日ですら40cm前後にとどまります。 太平洋側の小潮(東京の小潮平均は96cm)より小さい。 日本海側で「大潮を待つ」戦略はあまり機能しません。
なぜ広島が突出しているのか
1位の広島は387cmと、2位の名古屋(253cm)に大きく差をつけています。 これは瀬戸内海という地形に理由があります。
瀬戸内海は東の紀伊水道と西の豊後水道・関門海峡から潮が入り込む、細長く浅い海です。 外洋から入った潮汐の波が、狭く浅い海域で振幅を増幅させます。 さらに瀬戸内海の固有振動周期が潮汐の周期に近いため、共振に近い現象が起きて潮位差が大きくなります。
実際、広島の M2 分潮の振幅は101.5cmで、これは東京(47.8cm)の2倍以上です。 この大きな干満差が、瀬戸内海特有の速い潮流を生み出しています。
同じ県でも地点で違う
兵庫県の神戸(167cm)と鳥取県の境港(36cm)は、直線距離では150kmほどしか離れていません。 しかし瀬戸内海側と日本海側という違いで、干満差は4.6倍違います。
同じ高知県でも、高知(203cm)・室戸岬(202cm)・土佐清水(209cm)はほぼ揃っています。 太平洋に大きく開いた海域では、地点による差が出にくいことが分かります。
自分の釣り場がどちらのタイプかを知っておくと、他の地域の釣り情報をそのまま持ち込んで失敗する、ということが減ります。
潮位差が小さい海域での潮の読み方
日本海側のように潮位差が小さい海域では、「潮位が何センチ動くか」よりも「いつ動くか」に注目したほうが実用的です。 潮位差40cmでも、それが2時間で動けば流れは生まれます。 潮どきの潮汐グラフで傾きが急になっている時間帯を狙う、という読み方に切り替えてください。
また日本海側は日周成分(K1・O1)の比率が相対的に高いため、1日2回の満干のうち片方だけが大きくなる「日潮不等」が目立ちます。 当月の潮見表で満潮が2回ある日とない日を確認しておくと、釣行時間の組み立てがしやすくなります。