「今日は大潮だから釣れる」。 この言葉を聞いたことのない釣り人はいないでしょう。 しかし実際には、大潮でも潮が止まっている間はぱったり食いが止まることがあります。 一方で小潮でも、条件次第でカサゴやアイナメは口を使い続けます。 潮まわりの「名前」だけで釣行を判断しているなら、釣果を取り逃がしているかもしれません。
潮どきは全国2,930の漁港・799の砂浜それぞれについて独自に潮汐を計算しており、潮まわりの呼び名だけでなく、潮位差や潮位の変化の速さを数値とグラフで把握できます。 この記事では、その視点から各潮まわりを読み解きます。
大事なのは潮まわりの名前より「潮位差」
大潮・中潮・小潮という言葉は「潮位差の大小」を表すラベルです。 潮位差とは、その日の満潮の高さと干潮の高さの差のことです。 この差が大きいほど1時間あたりに海面が上下する量が増え、潮の流れも速くなる傾向があります。
潮どきが収録する24基準地点の調和定数から2026年の365日分を計算すると、大潮の日の潮位差は東京で平均181cm。 これに対して日本海側の舞鶴は平均30cmしかありません。 同じ「大潮」という言葉でも、場所によって潮の動き方はまったく異なるのです。 日本海側で釣りをする場合、太平洋側の感覚で大潮・小潮を判断すると大きなズレが生じます。
日本海側の大潮は平均26〜43cmほどです。 太平洋側・瀬戸内・九州側(神戸131cm〜広島337cm)の数分の1にとどまり、東京(181cm)と舞鶴(30cm)では約6倍の開きがあります。 同じ「大潮」でも中身はまったく別物です。 日本海側では、潮まわりよりも時間帯・マズメ・水温の影響が相対的に大きくなります。
大潮(おおしお)は「釣れる」と「釣れない」が同居する
月齢0〜2日・14〜17日・29日(新月・満月の前後)に訪れ、1か月に2回あります。 地球・月・太陽がほぼ一直線に並ぶことで起潮力が重なり、潮位差が最大になります。
アジ・イワシ・サバなどの回遊魚は、潮流に乗って餌が運ばれてくる大潮を好む傾向があるといわれます。 特に潮位差が150cm以上になる大潮では、漁港の水道部(港の内外の潮が入れ替わる狭い出入口)で強い潮流が生じます。 プランクトンや小魚が流れ込み、魚が集まる「フィーディングゾーン(捕食の場)」ができやすくなります。
ただし注意したいのが、満潮・干潮のピークに訪れる「潮止まり」です。 大潮は潮止まりが短く、その前後で一気に流れが速くなります。 潮どきの計算では、東京で潮位の変化が1時間あたり5cm未満になる時間は、大潮で1日約130分(1回あたり約30分)、小潮では約430分あります。 潮が止まっている間は魚の活性が落ちることがあるため、大潮の日でも潮が動く時間帯に集中して狙いましょう。
- ▪潮位差最大(太平洋側の大潮平均は東京181cm・名古屋224cm・広島337cm)
- ▪流速速い(漁港の水道部などで特に顕著)
- ▪特に有利な魚種アジ・イワシ・サバなどの回遊魚
- ▪注意点潮止まりは短く、その前後で流れと活性が急に変わる
中潮(なかしお)は「安定した釣果」が出やすい
月齢3〜6日・12〜13日・18〜21日・27〜28日に訪れ、1周期に4回あります。 潮まわりの中で最も日数が多く、1か月の約4割は中潮です(2026年は365日中150日)。 潮位差は大潮より小さく、大潮ほど流れが速くならない一方、小潮ほど緩い時間も長くありません。 潮が「ほどよく動き続ける」状態になりやすいのが特徴です。
経験豊富な釣り人に好きな潮まわりを聞くと、大潮ではなく中潮を挙げる人も少なくありません。 大潮ほどの瞬発力はないものの、1日を通じて釣果が安定しやすいといわれます。 特にサーフでのヒラメ・マゴチ釣りや、磯でのメジナ・チヌ狙いでは使いやすい潮まわりです。
小潮(こしお)は根魚狙いのチャンス
上弦・下弦の月(月齢7〜9日・22〜24日)の頃に訪れます。 潮位差が小さく、流れが緩やか。 回遊魚には不利ですが、「流れが嫌いな魚」には逆にチャンスです。
カサゴ・アイナメ・ソイといった根魚は、岩陰に潜んで餌が流れてくるのを待つ待ち伏せ型のハンターです。 強い潮流が続く大潮では岩陰に深く引っ込むことがありますが、小潮で流れが穏やかになると岩の縁に出て積極的に餌を追うといわれます。 「小潮の根魚は活発」というのは、こうした習性から説明される経験則です。
- ▪潮位差小(太平洋側の小潮平均は東京96cm・横浜91cm・神戸80cm。大潮の半分強まで落ちる)
- ▪流速遅い・穏やか
- ▪特に有利な魚種カサゴ・アイナメ・ソイなどの根魚
- ▪不利な魚種アジ・イワシなどの回遊魚(活性低め)
長潮(ながしお)・若潮(わかしお)
長潮は月齢10日・25日、若潮はその翌日(月齢11日・26日)です。 1周期にそれぞれ2日ずつしかない、最も日数の少ない潮まわりです。
長潮は小潮の末期にあたり、昔から潮がだらだらと動く「だらだら潮」の日とされ、一般に最も釣りにくい潮といわれます。 ただし潮どきの計算では、長潮の日の干満差は小潮の日よりやや大きく出ます(東京で小潮平均96cm・長潮116cm)。 干満差が最も小さくなるのは月齢8・23ごろ(小潮の中日)で、長潮の月齢10・25には、すでに大潮へ向かって戻り始めているためです。
若潮は、ここから大潮へ向かって「潮が若返る」日です。 潮の動きが戻っていく途中で、潮が動き始めるタイミングに一時的に食いが立つことがあり、ベテランの中には若潮の「スイッチが入る瞬間」を好む人もいます。
潮どきで潮まわりを確認する
潮どきでは全国2,930漁港・799砂浜の各ページで、その日の潮まわりを月齢・月の形の絵文字とともに表示しています。 日付を切り替えれば、前日から6日後までの潮汐グラフで「潮が動く時間帯」をグラフの傾きから確認できます。 大潮かどうかだけでなく「何時に潮が動くか」をセットで見ることで、釣行計画の精度が上がります。