「今日は大潮だから釣れる」——この言葉を聞いたことのない釣り人はいないでしょう。 しかし実際には、大潮でも潮止まりの2時間は驚くほど釣れない。 一方で小潮でも条件次第でカサゴやアイナメは口を使い続ける。 潮まわりの「名前」だけで釣行を判断しているなら、かなりの釣果を取り逃がしているかもしれません。
潮どきは全国2,930の漁港・806の砂浜に対して独自の潮汐計算エンジンを走らせており、単純な潮まわりの呼称だけでなく、潮位差・流速・潮位変化速度を数値で把握できます。 この記事では、その視点から各潮まわりを読み解きます。
潮まわりの本質——大事なのは「潮位差」
大潮・中潮・小潮という言葉は「潮位差の大小」を表すラベルです。 潮位差とは、その日の満潮の高さと干潮の高さの差のことで、この差が大きいほど1時間あたりの潮の動く量(流速)も増えます。
太平洋側の代表的な港、例えば東京湾中部では大潮時の潮位差が170〜180cm程度。 これに対して日本海側の舞鶴では20〜30cm程度しかありません。 同じ「大潮」という言葉でも、場所によって潮の動き方はまったく異なるのです。 日本海側で釣りをする場合、太平洋側の感覚で大潮・小潮を判断すると大きなズレが生じます。
この「日本海側は潮位差が10〜30cmと太平洋側の1/10以下」という事実は、釣り雑誌ではほとんど触れられません。 日本海側では潮まわりよりも時間帯・マズメ・水温の影響が相対的に大きくなります。
大潮(おおしお)——「釣れる」と「釣れない」が同居する
月齢0〜2日・13〜17日前後(新月・満月の前後)に訪れ、1か月に2回あります。 地球・月・太陽がほぼ一直線に並ぶことで引力が重なり、潮位差が最大になります。
アジ・イワシ・メバルなどの回遊魚は、潮流に乗って餌が運ばれてくる大潮を好む傾向があります。 特に潮位差が150cm以上になる大潮では、漁港の水道部(内外の潮が入れ替わる狭い出入口)で强い潮流が発生し、プランクトンが一気に流れ込む「フィーディングゾーン」が形成されます。
ただし注意が必要なのは「潮止まり」の時間帯です。 大潮では満潮・干潮のピークで1〜2時間ほど潮がほとんど動かない「潮止まり」が明確に現れます。 この時間帯は海水の循環が止まり、水深のある場所でも魚の活性が急落することがあります。 大潮の日でも、潮止まりを避けて潮が動く時間帯に集中することが重要です。
- ▪潮位差:最大(太平洋側150〜200cm以上)
- ▪流速:速い(漁港の水道部などで特に顕著)
- ▪特に有利な魚種:アジ・イワシ・サバ・メバルなどの回遊魚
- ▪注意点:潮止まり時間は明確で、その前後は急激な活性変化あり
中潮(なかしお)——実は最も「安定した釣果」が出やすい
月齢3〜6日・18〜21日・26〜28日前後に訪れ、月に3〜4回あります。 潮位差は大潮より小さいものの、極端に速い流れや強い潮止まりが起きにくく、潮が「ほどよく動き続ける」状態が続きます。
経験豊富な釣り師に「どの潮まわりが好きか」と聞くと、大潮ではなく中潮を挙げる人は少なくありません。 大潮の「爆発力」はないものの、1日を通じて安定した釣果が出やすいのが中潮の特徴です。 特にサーフでのヒラメ・マゴチ釣りや、磯でのメジナ・チヌ狙いには中潮が使いやすい潮まわりといえます。
小潮(こしお)——根魚狙いのチャンス
上弦・下弦の月(月齢7〜9日・21〜23日前後)の頃に訪れます。 潮位差が小さく、流れが緩やか。 回遊魚には不利ですが、「流れが嫌いな魚」には逆にチャンスです。
カサゴ・アイナメ・ソイといった根魚は、岩陰に潜みながら餌が自然に流れてくるのを待つ待ち伏せ型のハンターです。 強い潮流が続く大潮では岩陰に深く引っ込んでしまうことがありますが、小潮で流れが穏やかになると岩の縁に出てきて積極的に餌を追います。 「小潮の根魚は活発」というのは、単なる経験則ではなく行動生態に基づいた観察です。
- ▪潮位差:小(太平洋側でも50〜80cm程度)
- ▪流速:遅い・穏やか
- ▪特に有利な魚種:カサゴ・アイナメ・ソイなどの根魚
- ▪不利な魚種:アジ・イワシなどの回遊魚(活性低め)
長潮(ながしお)・若潮(わかしお)
長潮は月齢10日・24日前後、若潮はその翌日(月齢11日・25日前後)です。 長潮は1日の潮位変化が特に少なく、満潮と干潮の差が1日通してじわじわ変化する「だらだら潮」です。 一般的に最も釣りにくい潮とされています。
若潮はここから大潮へ向かって「潮が若返る」日です。 理論的には潮が回復途中で不安定ですが、潮が動き始めるタイミングに一時的に食いが立つことがあり、ベテランの中には若潮の「スイッチが入る瞬間」を好む人もいます。
潮どきで潮まわりを確認する
潮どきでは全国2,930漁港・806砂浜の各ページで、当日の潮まわりを月相絵文字とともに表示しています。 さらに7日分の潮汐グラフで「潮が動く時間帯」をグラフの傾きで視覚的に確認できます。 大潮だけでなく「何時に潮が動くか」をセットで見ることで、より精度の高い釣行計画が立てられます。