「マズメ時を逃すな」——ベテラン釣り師がよく口にするこの言葉。 日の出前後と日没前後の薄暗い時間帯を指す「マズメ時」は、多くの魚種で1日の中で最も活性が高くなる時間帯です。 しかしこの「時間」は季節によって大きくズレます。 夏の朝マズメは4時台、冬は6時台——同じ「日の出前後」でも2時間以上の差があります。 カレンダーの日の出時刻を確認せずに「早起きすれば大丈夫」と思っている場合、マズメを外していることがあります。
マズメとは、正確には何時から何時か
「マズメ(飯頃・鱒目)」は釣り用語で、夜明け前後(朝マズメ)と日没前後(夕マズメ)の薄暗い時間帯を指します。 厳密な定義はありませんが、実務的には以下が目安です。
- ▪朝マズメ:日の出の約30〜45分前から日の出後60〜90分まで
- ▪夕マズメ:日の入りの約60〜90分前から日の入り後30〜45分まで
季節によって時刻が大きく変わる
日本の日の出時刻は季節で大幅に変化します。 東京を例にとると、夏至前後(6月下旬)の日の出は4時25分頃、冬至前後(12月下旬)は6時47分頃です。 つまり朝マズメの開始時刻は、夏と冬で2時間以上の差があります。
「前日に夜更かしして4時に現地着」という釣り師は多いですが、冬の4時は日の出まで3時間近くあります。 一方夏に「5時出発」では朝マズメを完全に逃します。 釣行前日に必ず日の出時刻を確認する習慣が重要です。
潮どきの潮汐グラフには橙色の「日バー」が表示されており、その日の日の出・日の入り時刻を一目で確認できます。
主因は「光量の変化」——なぜ薄暗いと魚が釣れるのか
マズメ時に魚の活性が上がる最大の理由は「光量の急激な変化」です。 完全に暗い夜と明るい昼では、魚の視覚的な捕食効率が大きく異なります。 薄暗いマズメ時は、大型の捕食魚にとって「見えやすいが、獲物からは見えにくい」という絶妙な光条件になります。
加えて、明け方の水温変化もプランクトンの垂直移動を促します。 夜間は深場にいたプランクトンが、日の出前後に表層へ上昇する動きが起き、これを食べる小魚が表層に集まり、さらにそれを追う大型魚も浮き上がります。 食物連鎖が一気に垂直方向に動く、生態系のゴールデンタイムです。
緯度によって日の出・日の入り時刻が変わるため、北海道と沖縄ではマズメの時刻も異なります。 日本の南北は約25度の緯度差があり、夏至の日の出時刻は北海道旭川(3時55分頃)と沖縄那覇(5時40分頃)で約1時間45分の差があります。
朝マズメと夕マズメ——どちらが釣れるか
一般に「朝マズメの方が釣果が安定している」とされています。 主な理由として、夜間の静寂を経て魚が警戒心を下げていること、満潮・干潮のタイミングと重なりやすい朝に潮が動き始めることが多いことが挙げられます。
ただし「夕マズメの方が釣れる魚種」も存在します。 タチウオは夕マズメ〜夜にかけてが最盛期で、日没後1〜2時間がピーク。 アジも夕マズメに回遊が活発になりやすい。 夕マズメ派の釣り師には、日中仕事をして夕方から出発できる利便性を好む側面もありますが、実際の釣果データを見ると、狙う魚種によって朝・夕の有利不利は変わります。
マズメと潮の動き——最強の組み合わせ
マズメ時に加えて「潮が動き始めるタイミング」が重なると、釣果は大幅に向上します。 潮どきの潮汐グラフで、橙色の日バー(朝マズメ時間帯)とグラフの急傾斜部分(潮が速く動く時間)が重なる日を探すのが、釣行日選択の基本的な考え方です。
魚種別のおすすめマズメ時間
- ▪アジ・イワシ:朝・夕マズメ両方。回遊ルートが読みやすく、マズメ開始直後が勝負。
- ▪シーバス(スズキ):夕マズメ〜夜が主戦場。常夜灯の明暗境界も有効。
- ▪チヌ(クロダイ):朝マズメ。潮が上げ始めるタイミングと重なると特に好条件。
- ▪ヒラメ・マゴチ:朝マズメ×上げ潮が鉄板。サーフで最も期待できる組み合わせ。
- ▪タチウオ:夕マズメ〜日没後2時間がゴールデンタイム。
- ▪メバル:夕マズメ〜夜。常夜灯周辺の常夜灯ゲームも含む。