投げ釣りは、潮位の影響を最も直接的に受ける釣りのひとつです。 狙うのは砂浜の底にいるキスやカレイ。 潮位が変われば、同じ距離を投げても届く場所の水深がまったく変わります。
潮どきは全国799の砂浜について、浜の長さ・幅・平均勾配・波高のデータを収録しています。 この記事では、そのデータから見える日本の砂浜の実態と、投げ釣りへの活かし方を解説します。
日本の砂浜は9割以上が「遠浅」
潮どきが持つ砂浜データのうち、平均勾配が記録されている780件を集計すると、次のような分布になりました。
- ▪平均勾配3度未満(遠浅): 722件(92.6%)
- ▪平均勾配3〜6度(標準): 49件(6.3%)
- ▪平均勾配6度以上(急深): 9件(1.2%)
遠浅であることが投げ釣りに与える影響
平均勾配1.5度というのは、水平に100m進んで水深が2.6mしか増えないということです。 100m投げても、水深は3m前後にしかならない浜が大半だということになります。
これは投げ釣りにとって2つの意味を持ちます。 1つは、飛距離がそのまま有利にならないこと。 遠投しても水深が稼げないなら、遠投の価値は「未開拓のエリアを叩ける」ことに限られます。
もう1つは、潮位の影響が非常に大きいことです。 勾配1.5度の浜で潮位が1m下がると、水際は水平方向に約38m後退します。 干潮時に立っている場所が、満潮時には水深1mの海底になる。 同じ場所から同じ距離を投げても、届く場所の条件は潮位で大きく変わります。
キス——上げ潮で接岸する
キスは砂浜の浅場で、ゴカイなどの底生生物を捕食します。 潮位が上がって新しく水没したエリアには餌が豊富にあるため、上げ潮に乗って岸近くまで寄ってきます。
このため、キスの投げ釣りは上げ潮が基本になります。 干潮から上げ始めの時間帯に入り、潮位の上昇に合わせて手前を探っていく。 満潮に近づくにつれ、足元近くでもアタリが出るようになります。
遠浅の浜では、干潮時に沖の駆け上がりや馴染みの地形が露出することがあります。 干潮時に浜を歩いて地形を確認しておくと、満潮時にどこを狙えばよいかの精度が上がります。
カレイ——潮の動く時間帯と濁り
カレイは砂泥底に定位して待ち伏せする魚です。 キスほど積極的に移動しないため、「回遊を待つ」よりも「いる場所に届ける」釣りになります。
効くのは潮が動いている時間帯です。 流れが出ると砂が舞い、底生生物が動き出します。 潮止まりの時間帯はアタリが遠のき、動き始めに集中する——というパターンが多くの釣り場で報告されています。
カレイは冬から早春がベストシーズンです。 低水温期でも浅場に残る数少ない対象魚で、冬の投げ釣りの主役になります。 日中の水温が上がる時間帯と潮が動く時間帯が重なるタイミングが狙い目です。
ブレイクラインを探す
遠浅の浜でも、完全に平坦なわけではありません。 波の作用で、沖に向かって「浅い→深い→浅い」を繰り返す地形(バー&トラフ)ができています。 この深くなった溝(トラフ)や、傾斜が変わる線(ブレイクライン)に魚が付きます。
探し方は2つあります。 1つは干潮時の目視。 潮が引いたときに現れる地形の起伏、水が残っている場所、波の立ち方の違いを観察します。 もう1つはオモリでの底取りです。 着底までのカウントを取りながら扇状に探ると、水深の変化が分かります。
潮どきの各砂浜のページには、浜の長さ・幅・平均勾配・平均波高・最大波高を表示しています。 勾配が大きめの浜は手前から水深が取れ、勾配の緩い浜は遠投とポイント選びが重要になります。 事前に地形の性格を掴んでから現地に入ると、探る時間を短縮できます。
離岸流に注意する
砂浜の地形を読むうえで、離岸流(カレント)は釣りのポイントであると同時に危険でもあります。
波によって岸に運ばれた海水は、どこかから沖へ戻ります。 その戻り道が離岸流です。 ベイトや餌が集まりやすくポイントになりますが、流速は毎秒2mに達することがあり、人が泳いで逆らうことはできません。
離岸流の見分け方は、周囲と比べて波が立っていない筋、海水が濁って沖に伸びている筋、ゴミや泡が沖へ流れている場所です。 立ち込む場合は、絶対に離岸流の中に入らないでください。 潮どきの砂浜データにある平均波高・最大波高も、その浜の波の強さを判断する材料になります。