「大潮は新月・満月の頃」という知識は釣り師に広く知られています。 しかし「新月と満月、どちらの大潮が釣れるか」という問いになると、意見が分かれます。 夜釣りのベテランの間では「満月より新月の方が釣れる」という観察が多く聞かれます。 なぜそうなるのか、月齢と潮汐・釣果の関係を整理します。

潮汐は月と太陽の引力が作る
海面の上下運動(潮汐)は、主に月の引力で起きます。 月に面した側の海面は月の引力で引き上げられ(満潮)、地球の反対側の海面も遠心力の影響で同様に盛り上がります。 これが1日2回の満潮・干潮を生む基本的なメカニズムです。
ここで注意したいのは、潮を起こす力(起潮力)と引力は別物だということです。 太陽の引力そのものは月の約180倍ありますが、起潮力は天体までの距離の3乗に反比例するため、遠い太陽の起潮力は月の約46%にとどまります。 潮汐を主に月が支配しているのはこのためです。 月と太陽が一直線に並ぶ(新月・満月)と両方の起潮力が重なって大潮に、直角に位置する(上弦・下弦の月)と打ち消し合って小潮になります。
月齢と潮まわりの対応
潮まわりの呼び名(潮名)は、月齢に対して次のように割り当てられます。 潮どきもこの表で判定しています。
- ▪大潮月齢0〜2・14〜17・29(新月・満月の前後)
- ▪中潮月齢3〜6・12〜13・18〜21・27〜28
- ▪小潮月齢7〜9・22〜24(上弦・下弦の月)
- ▪長潮月齢10・25
- ▪若潮月齢11・26
月齢カレンダーと潮まわりカレンダーがずれる理由
「満月の日より、翌日のほうが潮がよく引いた」と感じたことはありませんか?潮名は月齢だけで決まるので満月の日は必ず大潮ですが、実際に干満差が最も大きくなるのは、多くの地点で満月・新月の1日ほど後です。
月・地球・太陽が一直線に並んでから、実際の海面がその影響を最大限に受けるまでには時間差があります。 これは海の形や深さ、地形の摩擦によって生じる「応答の遅れ」で、潮齢(ちょうれい)と呼ばれます。
潮どきの24地点の調和定数(M2とS2の遅角の差)から潮齢を求めると、太平洋側の多くの地点は約1日でした(東京1.2日・那覇1.0日・土佐清水1.0日・広島1.2日)。 一方、大阪・神戸は約0.5日と短めです。 日本海側は0.4〜1.4日と地点によってばらつきますが、半日周潮そのものが数cmしかないため、潮齢の違いを釣り場で実感することはまずありません。
このため、月齢カレンダーで「今日は満月」という日と、実際に最も潮が動く日は1日前後ずれます。 潮どきでは調和定数から各地の実際の潮位を計算しているため、当月の潮見表の「干満差」列を見れば、その月で本当に潮が動く日がどこかを直接確認できます。
「満月より新月が釣れる」は本当か
これは特に夜釣りで多く聞かれる観察です。 満月の夜は海面が明るく照らされるため、表層を泳ぐ小魚が捕食者に見つかりやすくなります。 その結果、小魚は深場に沈んで隠れ、それを追うシーバス・アジ・タチウオなども表層に浮きにくくなるといわれます。
一方、新月の夜は暗く、常夜灯の明かりが際立ちます。 光に集まるプランクトン→小魚→大型魚という食物連鎖が常夜灯周辺に集まり、アジング・メバリング・シーバス狙いの効率が高まります。 「新月の常夜灯狙いはよく釣れる」という経験則は、この仕組みで説明されます。
なお昼間の釣りでは月明かりの影響はないため、月齢よりも潮まわりと潮の動き方の影響が大きいと考えられます。
月の出・月の入りも釣果に影響する
潮どきの潮汐グラフ上部に表示されている紺色の「月バー」は、月の出〜月の入りの時間帯を示しています。 満月前後は月バーが長く、夜通し月明かりが続きます。 新月前後は月バーが日中に寄るため、夜の時間帯にはほとんど掛かりません。
夜釣りを計画するときは、月バーの有無と常夜灯の有無を組み合わせて判断しましょう。 月明かりが強い日の夜釣りは、常夜灯なし・表層よりも底付近・深場のポイントに切り替えると釣果が改善することがあります。